小さいころ「どこかで春が生まれてる、どこかで芽の出る音がする」という童謡を聞いて、春になると新芽が「ポン、ポン」と音を立てながら出てくるのかと思っていました。
まさにこの歌のように雪を破って芽を出すフキのとう。その花軸が伸びたものがフキですが、栄養は新芽のフキのとうの方にたっぷりと詰まっています。
まず注目すべきは、カリウム。フキのとうには、フキの約2倍のカリウムが含まれています。カリウムは血液中の不要なナトリウムを排出させ、血圧を下げてくれるので、高血圧が気になる中高年には大切な栄養素です。そのカリウムとクロロゲン酸による独特の香りとほろ苦さは、食欲を増進させ、胃を丈夫に保つ効果があるといわれます。
もう一つは、β─カロテンです。このβ─カロテンも、フキと比べると豊富に含まれています。また、粘膜を強くする作用があり、風邪の予防に役立つといわれ、がんの抑制にも深くかかわっています。
そしてフキのとうは、みずみずしい美肌づくりに効果があるビタミンCも含んでいます。
このように栄養価の高いフキのとうは、昔から春の山菜として親しまれ、みそ汁の実としてもよく登場しました。
ところで、フキのとうの花軸のことを「薹(とう)」といい、「薹が立つ」とは硬くなり、若さが失われてしまうことを指します。体に必要な栄養素をフキのとうから取り入れて、いつまでも若々しくありたいものです。
参考文献
『クスリの食べ物』(西東社)
『野菜&果物図鑑』(新星出版社)
『新食品分析表』(一橋出版)
※文中冒頭に登場する曲『どこかで春が』(作詞:百田宗治、作曲:草川信)の歌詞は、正しくは「どこかで春が生まれてる どこかで水がながれ出す どこかでひばりがないている どこかで芽の出る音がする」(出典:『精選日本の歌120選』ドレミ楽譜出版社)となります。
フキのとう | ……… | 6~7個(約100g) | ||
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サラダ油 | ……… | 大さじ1 | ||
A | みそ | ……… | 50g | |
砂糖 | ……… | 大さじ2 | ||
みりん・酒 | ……… | 各大さじ1 |
作り方(全量で233kcal)
- フキのとうは2~3分ゆで、水にさらす。水気を絞ってから細かくきざみ、再度絞る。Aは混ぜておく。
- 鍋に油を温め、フキのとうをさっといためる。Aを加え、弱火でさらに3~4分、汁気がなくなる程度までいためる。
撮影:大井一範
(JA広報通信3月号から転載)