「裏の原っぱで、ミョウガを取っといで」。路地裏の借家で暮らしていた子どものころ、母によくそう言われたものです。野菜はたいてい八百屋で買っていたようですが、ミョウガは原っぱに生えているもので十分だったのでしょう。大人になってスーパーでミョウガを見ると、草陰に生えていたふっくらとしたミョウガを思い出します。
ミョウガは、つぼみの部分を花ミョウガ、軟化栽培した茎の部分をミョウガタケと呼びます。薬味によく使うのは花ミョウガで、盛夏から秋にかけて旬を迎えます。その特徴は独特の香りにあります。その香りはα─ピネンという香り成分によるもので、ボーッとした頭をクリアにさせる働きがあります。
ミョウガのシャキシャキとした食感やさわやかな辛味は、食欲を沸き立たせます。まさに夏バテ解消には格好の野菜といえます。そうめんや冷ややっこの薬味、酢の物、みそ汁の実、天ぷらなどに大いに活用したいものです。
またミョウガは、血液の循環を良くし、発汗を促す働きがあるため、冷え性や月経不順に悩む女性にはおすすめしたい野菜です。栄養面では食物繊維が多く含まれ、薬味として使われる野菜では豊富といえます。カリウムも比較的多めに含んでいます。
さて、「ミョウガを食べると物忘れがひどくなる」という言い伝えがあり、これをネタにした古典落語もあります。しかし実際は、この説に科学的根拠はなく、むしろ最近では香り成分に集中力を増す効果があるともいわれています。
いよいよ夏到来。香り、食感、食物繊維と三拍子そろったミョウガで、日本の夏を乗り切りましょう。
参考文献
『野菜&果物図鑑』(新星出版社)
『新食品分析表』(一橋出版)
『野菜の手帖』(講談社)
ミョウガ | ……… | 5個(100g) | |
---|---|---|---|
サラダ油 | ……… | 小さじ1 | |
A | 酒 | ……… | 大さじ1 |
砂糖 | ……… | 小さじ1 | |
しょうゆ | ……… | 小さじ1 |
作り方(1人分68kcal)
- ミョウガを縦に薄切りにします。
- 鍋に油を熱し、強火で(1)をさっといためます。Aを加え、強火のまま、汁気がなくなるまでいため煮にします。
撮影:大井一範
(JA広報通信5月号から転載)