アキバ博士の食農教室「食の知恵と文化」

すしはどうして1皿に2つ?

すしはどうして1皿に2つ?

食べやすく縁起よい

 すし店でにぎりずしを注文すると、「2つ」と頼んだわけではないのに、皿に2つ並んで出てくるよね。どうしてかな?

 2つのにぎりずしが並んで出てくるのは、「大きいものを1つ出すよりも、小さめのものを2つ出したほうが食べやすい」という、すし職人のお客さんへの心遣いと「1つだけでなく、2つ並んだものを好む」日本人独特の感覚からだよ。

 一口でぱくっと食べられる今のにぎりずしになったのは、江戸時代の終わりといわれている。それまでは今の3倍くらいの大きさだったんだ。両国のすし店の華屋与兵衛が「食べやすいように」と半分に分けて握り直し、お客さんに出したのが始まりだというよ。

 与兵衛は、2つに分けたすしを、ばらばらに出さず、1枚の皿に並べて出した。これが、左右対称を好む日本人の気質にぴったりと合ったんだ。

 思い浮かべてごらん。神社に行くと、2匹の狛犬(こまいぬ)が並んでいるよね。昔の朝廷には左大臣と右大臣がいて、天皇を挟むように並んで座っていた。日本人には「左右対称に2つ並んだものは縁起がいい」という、独特で、昔ながらの感覚があるんだ。

 実は、「にぎり飯を2つに分ける」のは、日本人が忌み嫌う行為なのさ。にぎり飯は米でできているよね。江戸時代は、年貢といって、税金を米で納めていたから、米の価値は、ほかの何よりも高かったんだ。

 それを丸めたにぎり飯は人間が食べるだけでなく、神様に供えることもある神聖なものだったんだ。それを2つに分けて壊すことは、日本人にとって神様を壊すような失礼な行為だと考えられていたんだ。

 ただでさえ気性の荒い江戸っ子たちに、「にぎり飯を2つに分けるなんてどういうことだ」と怒られずに“与兵衛スタイル”が受け入れられたのは、2つに分けたすしを、きちんと並べたからさ。逆に「縁起がいいじゃないか」と、納得したというよ。偶然だったのか、与兵衛が狙ったのかは、今となっては分からないけれどね。

 日本人が米を大切にしてきた気持ちが伝わってくるね。にぎりずしを食べるときには、ねただけでなく、米も味わわなくっちゃ。

 

(取材協力=東京・日本橋の老舗すし店・吉野鮨本店、食文化史研究家・永山久夫さん)

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