アキバ博士の食農教室「農の知恵」

イチジクは花がないの?

イチジクは花がないの?

実の中に隠れているよ

 夏休みが終わって新学期が始まったね。みんなの生活も、夏休み中とはだいぶ変わったんじゃないかな。でも、夏から秋まで変わらずに、おいしく食べられる果物があるよ。それはイチジク。イチジクは8月から10月まで3カ月近く旬が続くんだ。イチジクは漢字で「無花果」と書くけれど、これは「花が無い果物」っていう意味だ。実際、イチジクの枝に花らしい花が咲くことはないよ。でも、実がなるのに花がないなんて、変だなぁ。

 いや、花はあるんだよ。でも、花が実の中に隠れて咲くという変わった仕組みになっているので、外からは見えないだけなんだ。イチジクの実は内側に空洞のある袋状になっていて、内側に小さな花がたくさん並んでいるよ。花といっても花びらがなくて、花とは思えない姿をしているんだ。

 では、どうしてイチジクの花や実は、そんな形になったのかな。それは、イチジクの受粉の仕方と関係しているんだ。イチジクはもともとアラビアや小アジアが生まれ故郷。故郷の野生状態では、イチジクコバチと呼ばれる小さなハチが、イチジクのおしりに開いている小さな穴から入り込んで、中に卵を産むんだ。

 卵は孵化(ふか)して幼虫になる。中には養分やすむところがあって、幼虫はそこで成長する。成虫になったイチジクコバチは、体に花粉を付けて外に出てくる。そうして、ほかのイチジクに飛んで行き、産卵する。このときに、体に付けた花粉をイチジクの花に付けるので、イチジクは受粉できるという仕組みなんだ。

 イチジクはこうして種子を作ることができて、イチジクコバチの方は、幼虫のために安全で餌の多いすみかを用意できるというわけなんだ。イチジクとイチジクコバチは、助け合って生きているんだね。

 「えっ、じゃあイチジクの中には虫がいるの?」と心配する人もいるかもしれないけれど、心配ご無用。日本にはイチジクコバチはすんでいないし、日本で栽培されているイチジクの品種はイチジクコバチが花粉を運ばなくても、花粉がついたのと同じように実がなる性質(単為結果性)を持っているんだ。

 だから「イチジクを割ったらイチジクコバチがいた」なんてことは日本ではないから、安心して食べてね。イチジクは不思議な生態を持っているんだね。

(取材協力=群馬県農業技術センター中山間地園芸研究センター)