アキバ博士の食農教室
AKIBA-HAKASE

変わった野菜をなぜ作るの?

2022.03.31

変わった野菜をなぜ作るの?

店で目立つようにさ

(C)こぐれ けんじろう・画

 だんだん日が長くなってもう少しで春だね。でも、まだ寒い日もあるから、栄養豊富な野菜を食べて風邪をひかないようにしようね。僕はスーパーや直売所で野菜を買うよ。最近、珍しい形の野菜を見掛けることが多くて、つい立ち止まってしまうんだ。なぜこんなに変わった形の野菜を作るんだろう。

 形に特徴がある野菜というと、ミニハクサイやハート形のミニトマト、いぼがないキュウリ、ラグビーボール形のカボチャなどたくさんあるよ。農家が形の珍しさや、かわいらしさをアピールして、消費者の目を引けるように種を作る種苗会社が開発しているんだ。

 新しい野菜を開発する作業を育種というよ。育種では、いろいろな特徴を持った何千もの野菜を掛け合わせるんだ。国内外の品種や野生種を使うよ。実現したい形や大きさになるまで多くの品種を掛け合わせるんだ。形だけでなく、栽培のしやすさや病害への強さ、おいしくて栄養があることも大事な条件になるよ。

 ミニハクサイは、重さが通常の大玉ハクサイの4分の1、500グラムほどしかないよ。冷蔵庫に切らずに収まる大きさで、少人数の家庭を中心に人気があるよ。

 偶然がきっかけになってできた品種もあるよ。種苗会社の社長さんが、研究中のトマトを家に持ち帰ったとき、娘さんが「イチゴを持って来てくれた」と大喜びしたことから、育種が始まったイチゴのような形のミニトマトがあるんだ。発売された今では、ハート形で、かわいいと消費者に評判だよ。

 育種して商品になるまで10年くらいかかるよ。さらに、これまでにない形の野菜は、市場やスーパーの関係者に「規格外」とされてしまうこともあるよ。種苗会社は農家と一緒になって、おいしさや料理のしやすさも説明しているんだ。

 庭やプランターで手軽に作れる野菜も開発されているよ。安全で健康になれる野菜を、自分で作って食べたいという人が増えているんだ。育種をする人は、これまで以上に消費者を意識した研究を進めているよ。

 育種は、夢のような目標を持って挑戦し続けることが大事だよ。それが、ひらめきや偶然を生み、成功につながるんだ。みんなも大きな目標を持とうね。

(取材協力=トキタ種苗、タキイ種苗、サカタのタネ)